インタビュー(高田郁さん)
● インタビュー ● 「みをつくし料理帖シリーズ」 高田郁さん
2011年
20160927close/BOOKSERVISEサイト転記(テキストのみ)
高田 郁さん(たかだ かおる) プロフィール
兵庫県宝塚市生まれ。
中央大学法学部卒。1993年、漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2007年、『出世花』で作家デビュー。小説NON短編時代小説賞奨励賞受賞。2009年5月から「みをつくし料理帖」シリーズ、スタート。
心も、おなかも、温まる。
「みをつくし料理帖」シリーズの第一弾『八朔の雪』は2009年に出版。
たちまち多くの支持を受け、
その年の「歴史・時代小説ベスト10」(週刊朝日)第一位、
「R-40本屋さん大賞・文庫部門」(週刊文春)第一位などに選ばれる。
このシリーズには、人の情と、うまい料理がたっぷり!
作者の髙田郁さんにお話をうかがった。
――漫画原作者としてデビューした髙田さんが、小説を書くようになったきっかけは何でしょう。
もともと時代小説が大好きでした。亡父が山本周五郎さんの大ファンだったこともあり、物心ついた時から周五郎作品に馴染んでいました。四十半ばで周五郎さんの「なんの花か薫る」という短編を読み返して、ノックアウトされました。「この世界へ行ければ、何も望まない」と。
数年後、網膜に孔が開いたのを機に、「今、転身しないと後悔する」と思い、時代小説の世界へ転身しました。
――漫画原作者と小説家の大きな違いは何ですか。
漫画原作者は完全な黒子で、自身の書いたものが直接読者の目に触れることはありません。小説家は自分の書いたものがストレートに読者に伝わります。これが一番の違いでしょうか。ただし、どちらも物語を構築する作業であることに大きな相違はないと思います。
――「みをつくし料理帖」の舞台は江戸。主人公・澪は大坂育ちです。“上方と江戸の対比”はこの本の面白さのひとつ。これには髙田さんご自身の体験も関係あるのでしょうか。
はい。生まれも育ちも兵庫県の片田舎でしたが、進学のために上京してみれば、驚くことばかりでした。食パンが8枚切りだったり(関西は5枚から6枚切りが主流)、中濃ソースに「これは何?」とビックリしたり(関西ではウスターかとんかつソースで、中濃は当時はありませんでした)。昭和50年代でさえそうだったのですから、江戸時代ならさぞや、と思った次第です。
大坂から出てきた娘を主人公にすれば、「初めての江戸」を読者も主人公と一緒になって楽しめるかと思いました。
時代考証については、図書館で調べたり、司書さんや学芸員さんに尋ねたり、と色々です。大坂の資料は大阪に、江戸の資料は東京に集中しているように思いますので、両方を行き来して調べています。
――かなり料理好きとお見受けします。「みをつくし料理帖」に出てくる料理は何度も作ってから載せているとか。
『花散らしの雨』に「忍び瓜」を載せたときは、三週間、朝昼晩と毎食きゅうりの試作品を食べました。おかげですっかり痩せてしまい、周囲から心配されました。痩せますよ、きゅうり。
本の巻末に「澪の料理帖」というレシピのページがありますが、これは、担当編集者に原稿を添付ファイルで届ける際に、料理の写真を撮って添付して送っていたら、「お腹が空きます」「美味しそうです」と言われ、つい「それならレシピもつけましょうか」ということで生まれました。
レシピを載せる載せないに関わらず、作品に登場するお料理は全て作っています。そうでないと書けませんので。ただし、“泥鰌汁”は除いてですけれど。
――「つる家」の人々は、血はつながっていなくても“家族”のようですね。
とくに“家族”を意識して書いたことはありません。ただ、あまり血にばかりこだわっていては物語は広がらないのでは、と思いました。また、個人的に「縁」という言葉がとても好きなのですが、家族というのも縁、家族でないのに巡り合うのもまた縁だと思っています。
――澪は、作品を追うごとに、少しずつ辛抱強くなっていくようです。
ええと、もともと澪は辛抱強いのです。ただ、最初の頃はよく泣いていました。作品が成長するごとに少しずつ強くなっています。最近はあまり泣かなくなりました。
キャラクター作りに腐心するのは、「生き生きとしているか否か」です。漫画の世界では「キャラが立つ」と言いますが、血が通っているキャラクターは自身で動くことが出来るように思います。
――シリーズ5作目の最新刊『小夜しぐれ』の予告をぜひ少し…。
澪と美緒、ふたりの娘の恋が動きます。あまりネタばれをしてしまうと、読者さんの楽しみを奪ってしまいますので、あとは何とぞ御容赦のほど。
――今後の執筆のご予定を教えてください。
まずは「みをつくし料理帖」に私自身も身を尽くす所存です。描きたいモチーフは幾つもありますが、不器用な性格で、同時進行が出来ません。ひとつひとつを丁寧に紡いでいきたいと思います。
作品を書く時は、いつも「誰かの人生の伴走者になりたい」と考えています。お読み頂いて、束の間ホッとしたり、色々あってももう少し踏ん張ってみるか、と思って頂ければ嬉しいですね。
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